相続税の減額の可能性について
相談内容

相続に当たり、相続財産に占める不動産の割合が高いケースがよくあります。
通常は相続税路線価によって土地価格を査定しますが、相続税が安くなるような要因は何か無いでしょうか?

不動産鑑定士の回答

相続税路線価では考慮できないものとして以下に掲げる「地下の状況」があります。 これらがある場合、土地価格が下がり、結果的に遺産総額が減額できる訳です。

1)埋蔵文化財
埋蔵文化財ですが、所有者の義務で発掘・採掘をしなければなりません。
勿論、所有者が自ら発掘・採掘するわけではなく、教育委員会等の学芸員がすることになるのですが、 この発掘・採掘が済むまで土地は使えません。つまり、家を建てることはできません。
数日程度であれば問題は無いのですが、順番待ちもあるため、数ヶ月から1年程度を要する場合もあるそうです。

また、もっと厄介なのは、費用です。これは所有者負担です。どの程度かかるのか、はっきり言って見当が つきません。その、埋蔵文化財が地中のどのくらい深くに眠っているのか分からないからです。
某市では、1立米掘るのに1万円程度であるとのガイドラインがありますが、あくまでの目安。
掘っていくうちに、水(地下水)が湧き出て、工事が延び延びになることもあるそうです。
これの費用もすべて所有者負担。
ですから、埋蔵文化財があることが分かったら、相当の減額が可能です。
埋蔵文化財の有無は役所の教育委員会等で分かります。
但し、市町村によっては、なるべく迷惑をかけない趣旨から、期間及び費用とも僅少で済むように配慮している ところもあるようです。

2)地下埋設物
防空壕や以前建っていた基礎部分が問題となります。
実際には防空壕は都市部ではそれほど残っていると思われないため、ここでは以前建っていた基礎部分の 撤去について述べます。
厄介なのは、以前建っていた建物が鉄筋コンクリート等の堅固建物で、基礎杭が残っている場合です。
通常なら、基礎部分も取り壊し時に合わせて撤去するのですが、基礎部分撤去には費用が多額になるため、 残存している可能性がある訳です。
外から見ているだけでは分からないのですが、古い住宅地図や閉鎖登記簿で、以前何が建っていたかを確認し 建物の種類によっては疑ってみる必要があります。
では、幾らの費用がかかるかですが、図面等で基礎杭の本数とその直径が分かれば、概ね見積もりすることが できます。
詳細の工種別の詳細な見積は、場合によりけりですが、ざっとみて、基礎杭1mあたり1万円〜1.5万円程度 でしょうか。また、長さ13m〜15m程度のものを経験したことがあります。
むろん本数により、撤去総額が変わってきますので図面等で確認する必要があります。
では、全く資料が無く、本数や長さが分からない場合ですが、これは全くお手上げで、費用を掛けて業者に地中 調査をして貰わなければなりません。
何れにせよ、一般的な住宅用地の場合、百万円単位の費用を覚悟しなければなりません。
よって、鑑定評価書を取ることなどで、土地価格を減額することができます。

3)産業廃棄物
近年話題に上ることが多い、産業廃棄物です。
所有者に撤去義務が有ることは今や常識ですが、では撤去するには幾らかかるのでしょうか?
汚染の程度にもよりますが、はっきり言ってしまえば、詳細な調査が無いと見当がつかないのが正直のところです。
その調査は、役所に照会したり、地元の方に伺うあるいは専門家に依頼する以外に、先に述べた古い住宅地図や 建物閉鎖登記簿を調査します。
ここの、以前は工場が建っていたりすれば、要注意です。もちろんすべての工場跡地が汚染されているとは限り ません。
一定の化学工場等では危険性が高いものの、機械加工工場等は可能性が低いと考えるのが一般的です。
また、「もらい汚染」といって、隣接若しくは周辺に工場等が立地していた場合、その土地も汚染していることも あり得ます。
いずれにせよ、産業廃棄物の疑いの有る場合は過去の履歴調査をして、過去の建物には十分注意しましょう。
土壌汚染の土地で浄化費用を見積もりをとって、鑑定評価書を添付して、相続税の評価額引き下げに使った事案が あると聞いております。
これらがある場合、土地価格が下がり、結果的に遺産総額が減額できる場合があります。
なお、土地価格が下がり、結果的に遺産総額が減額できる場合(地下の状況)は以上のとおりですが、減額できると よく誤解されているケースに鉱業権の登記があります。

※鉱業権の登記
鉱物資源を採掘できる権利が鉱業権です。土地に付着した権利です。
普通土地の所有権を表示する登記簿は法務局に有りますが、鉱業権の登記簿は経済産業省に有ります。
では、鉱業権の登記があった場合、土地の価値は上がるでしょうか?下がるでしょうか?
答えは、全く変わりません。
なぜなら、土地の所有権又は使用権を取得していない限り、実際の採掘は不可能であり、鉱業権の付着は 所有権に何ら影響を及ぼさないからです。
過去に、鉱業原簿をちらつかせ、「権利を放棄するから金をよこせ」式の恐喝が行われることもあった旨、 経済産業省の職員から聞いたことがあります。
但し、鉱業権の登記があり、過去に採掘の事実があった場合は、話が別です。
これは、地盤の強弱の問題であり、地下が空洞化しており地盤沈下の原因と成り得るからです。
なお、愛知県には瀬戸市から豊田市にかけて、大規模な亜炭鉱がある旨、付記します。